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ぼくはサバイバー(武 和さん)

2013年11月12日

みなさんは小児がんサバイバーという言葉を聞いたことはありますか?
小児がんサバイバーとは、15才以下で小児がんと呼ばれる白血病や骨肉腫など47種類ある病気にかかったことのある人です。
僕も、5年前、小児がんの一種「悪性リンパ腫」にかかった小児がんサバイバーです。退院はしましたが、まだ通院し血液検査などをしています。
最近になり、自分の病気について詳しく知るようになりました。知るにつれて見えてきたのが小児がんサバイバーへの偏見です。
「副作用で髪が抜けたことでいじめられた。」
「うつるかもしれないという噂が立って、みんなにさけられた。」
「大人になってから、病気のことが原因でアルバイトをクビになった。」

これらの話はほんの一例です。
子どもに解りやすく説明するのは難しい病気ですし、大人には正しい知識が与えられる場が少なく偏見が生まれてしまうというのが現状です。
それに引き換え、僕はとても恵まれています。退院して学校に戻った時、クラスメイトはとてもあたたかく迎えてくれました。そして学校のみんなも、髪がないこと、顔が丸いこと、みんなと同じように生活できないこと等を何も言わずにいつも通りに接してくれました。
この「いつも通り」ということが、とても嬉しいことなのです。なぜならサバイバーや患児には偏見の目、特に「かわいそう」という目が向けられるからです。
ずっと通院しなければいけないし、輸血をしているので献血もできない。合併症といって成長障害が出るかもしれないという恐怖や、もしかしたら再発するかもしれない不安などと闘わなくてはいけない。だから「かわいそう」と思うことは自然かもしれません。

しかし、「かわいそう」と思われ、態度を変えられることは、サバイバーが一番嫌うことであり、「そう思うくらいなら、代わってくれ!」と思ってしまいます。僕たちサバイバーは周囲の人が何もなかったかのように接してくれることが一番嬉しいし、ホッとするのです。
何でも好きなものが食べられること、家族と一緒に生活すること、学校に行き友達と笑いあうこと。これらは入院中、制限されていたり、体調のせいでできなかったりしたことです。「みなさんにとって普通の生活」をおくれることが何よりも嬉しいのです。

僕は、今こうして病気のことを発表していいものかと、とても迷いました。それは、先に天国へ旅立った仲間達や、あの時中学生だった同室のお兄ちゃん達は「そっとしておいてくれ」と思っているのではないか。そして自分の病気のことを話すと「かわいそう」「大変だったね」などと言われ、平等に接してもらえなくなるのではないかという気がして、あまり人前で病気のことを話したくありませんでした。
しかし、サバイバーの今おかれている状況を知り、僕が一代表として小児がんのことを話すことによって、サバイバーや患児のことを理解し、支えとなってくれる人が増えることを願い、話すことを決心しました。

僕はこれからも小児がんの子ども達の希望となれるよう一日一日を大切に歩んで行きたいと思います。そしてたくさんの人にサバイバーのことを知ってもらうために、これからも偏見を恐ることなく、声を出していきます。

偏見がなく安心して生活ができる。それが僕の願いです。

武 和(10代)