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祖父との思い出(窪田 和巳さん)

2013年4月18日

私は小学生4年生のときに祖父を大腸がんで亡くしました。末っ子の私を幼少期からかわいがってくれ、よく祖父の部屋で一緒に寝たのを覚えています。

私が小学生になって間もなく祖父が大腸がんを患い、手術を経てストーマ(人工肛門)を装着した生活が始ましました。次第に部屋で一緒に寝る機会も少なくなり、会いに行くたびに祖父が弱っていく様子をみて、「自分に何かできることはないのか」と思い悩む日々を過ごしました。

最期の日は鮮明に覚えています。いつものように小学校で授業を受けていたところ、校内放送で、私と、同じ学校に通っていた兄弟いとこが職員室に呼ばれました。先生からは、祖父が亡くなったので今から病院へ行きなさいということを伝えられました。

入院先に向かうと、病室で悲しみに暮れる祖母、「○○さん、先に逝くなよ」と涙を流す病室の患者さんの姿を目の当たりにしました。はじめは身近な人の「死」に対して何が起きているのかよく分かりませんでした。しばらくすると、母から「おじいちゃん、もう目を覚まさないの。手は温かいのにね。触ってごらん」と言われました。祖父の手を握ると、温かさは残るものの心なしか柔らかさは無く、祖父から握り返すこともありません。ああ、これが死というものなのかと実感しはじめた瞬間でした。

葬儀を終えた後、我が家では毎夕に家族全員で読経をするのが習慣となりました。毎日読経を続ける中で、祖父と過ごした日々を省みました。そして、「がんが無ければ、祖父は今も生きていて、家族の幸せがもっと続いたはずなのに」と思いを巡らせるようになりました。

それから医療を通じて人の役に立ちたいという思いが強くなり、看護師の道を目指し、現在に至っています。現場からは離れたものの、現在の活動を通じて一人でも多くの笑顔に出会えたらと思っています。

窪田 和巳(30代、男性)