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サバイバー ―がん経験者、遺族、医療者として―(吉見千明さん)

2014年2月5日

私は22歳のときにホジキンリンパ腫になりました。薬学部の学生でさぁこれから国家試験に向けて頑張ろうという時でした。
半年間の化学療法はあらゆる副作用に悩まされ、「どうして私がこんな目に合わなきゃいけないんだ」とたくさん泣きました。それでも乗り越えることができたのは周りの温かい人たちの笑顔や言葉でした。家族は常に私を支えてくれました。不安いっぱいで憂鬱な顔をしている私に外来化学療法室の受付さんはいつも笑顔で「おはようございます」と声をかけてくれて、看護師さんはお姉ちゃんのように優しく迎えてくれました。点滴するのは嫌だったけど、病院にいくのは好きでした。そして、同じ病気を闘った友人。経験したものにしかわからないつらさや苦しみを分かち合うことで心が楽になりました。幸いにも半年間の治療を経て、完全寛解を勝ち取ることができました。

そして昨年、最愛の母を胃癌で亡くしました。58歳でした。再発したと分かったとき、気丈にふるまってはいましたが、毎日が不安で仕方ありませんでした。それからの約1年半の間、「大丈夫、私が支えるんだ」という強い気持ちと「来年の今頃はもういないかもしれない」と弱気になる気持ちの波が交互に押し寄せていました。今でも「こうしてあげたかった」「もっと話したかった」など後悔の波が押し寄せる日もあります。患者家族だからこその不安や葛藤、苦しみもあるのです。

がんに関わる経験の中、私が必要としていたのは「自分のためにサポートしてくれる人がいること」、「気軽に話ができる相手がいること」でした。身体的にも精神的にも様々なサポートがあって乗り越えることができた一方で、もっとこうしてほしかったということもありました。
私は今、病院で薬剤師として働いており、外来化学療法室での薬剤指導や病院内の緩和ケアチームの一員として活動しています。私は患者さんやそのご家族にとって身近に相談できる人になりたいです。医療者としての知識(EBM: Evidence-based medicineに則った治療)とサバイバーとしての経験で誰かの力になれたらと思っています。あえて、自分がサバイバーであることを公表して患者さんと接することはほとんどしていないですが、心に寄り添う医療の提供をめざしていくことがサバイバーである私に課せられた使命だと思います。

(吉見 千明さん、20代)