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All you need is love(山田 祐貴子さん)

2013年9月13日

想像してください。 2009年2月40歳の誕生日当日の夕方私は、乳がんの告知を受けました。私が住んでいる札幌は雪祭りの前夜祭で大変にぎわっていました。とても寒く雪がしんしんと降るなか頭に雪をつもらせながら気づけば何駅分も歩いていました。両親を悲しませないようにどうやって伝えたらいいだろう 仕事はどうしよう ぐるぐるグルグル考えていました。 手術日が決まり家でも会社でも入院準備が忙しく心の準備は後回しになっていたとき、友達に  「治療法のある病気でよかったぁ」とホッとしたように言われ私の悶々とした気持ちがさぁっと晴れて行くのがわかりました。私は幸せなんだと思えるようになった瞬間でした。

でも一方で傷つく言葉もたくさん言われました。「悪いところ全部手術でとったんだからもう元通り元気でしょう」と言われたら 治療はまだまだ続くしこれからずっと再発転移と隣り合わせの人生なのにと思ったし 「私の職場にも乳がんしたけど元気な人いるよ」と言われたら「その人はリンパ節転移なかったんでしょ。」としか思えませんでした。今思えば悪気はまったくない言葉だったのに受け止める私の方に余裕なく、ただ涙をこらえ生返事をすることしかできませんでした。

英語では  thinking of youやcare about you のように愛情あふれ、それでいてオールマイティな表現がありますが日本ではなかなかありません。病状はひとりひとり異なるし、それを感じる患者もそれぞれなので傷つく言葉もひとりひとり違うからとても難しいのです。しかし言葉を選ぶのが難しいからといって距離をおかれるのも、どんどん孤独になり社会復帰が難しくなります。なにか言葉をみつけようと個人のブログなどで NGワードを取り上げているのを参考にしようとしてもマッチするとは限りません。

ですからまず学校教育でがんの知識を伝えてほしい。がんはすぐには死なないけどずっと治療と検査が続いていくこと。種類も進行具合もいろいろあってひとそれぞれに違うことを知ってほしい。そうすれば無知からくる言葉は激減するでしょう。多くのサバイバーから、実際言われて嬉しかった言葉、力になった言葉を医療従事者はもちろん多くの社会人が読めるようにまとめて出版してほしいと思います。

最後に私の成功例を紹介します。上司に妻が乳がんになったと告白されました。山田さんはどこで手術したの?調べたんだけどその病院とても評判いいし実績も北海道一だよね。僕もそこで手術を受けてほしいんだけどかかりつけ医師に紹介されたきいたことない病院で検査と告知をされたので、このままその病院で手術すると妻が主張してこまっていると言うのです。確かに私もきいたことがない新しい病院でした。しかしまた病院をかえて痛い検査を繰り返ししたくない奥様の気持ちもわかるのでどうしようかと考えとっさに思いついたことを私は言いました。「恋愛結婚ですか?それなら、奥様「 All you need is love 」の男性を見る目を信じましょう!好きになって結婚して幸せにくらしているじゃないですか 奥様を信じましょうよ」 と。いつも厳しい上司が、照れくさそうにでも晴れやかにちょっとウルっとしながら何度もうなづいてくれました。

嬉しかった言葉を集めた本を私は出版して病院の待合室や職場の休憩室などに置き大勢の方々に読んでもらうことができたら、患者も家族も同僚も一緒にハッピーになれるはずです。
そんな愛に溢れたハピネスな本を読みたく有りませんか??

山田祐貴子(40代、女性)