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小児がんを乗り越えてからの未来へ(林 志郎さん)

2013年9月18日

私には1歳の息子がいます。
私は6歳で白血病を、妻は4歳で悪性リンパ腫を発症した小児がんの経験者同士のとても珍しいケースの夫婦です。
結婚にも、妊娠にも、出産にもとても不安を感じて、頼る情報も乏しく、“安心”という確信が持てなくて私たち夫婦はとても不安を抱えていたのが実感です。
※夫婦のどちらかが小児がん経験者というケースは増えてきています。
現在私は小児がん経験者の仲間、後輩への支援をしている団体の代表を務めています。
毎年小児がんを発症する子どもの数は2500人とも言われ、近年その子どもたちの8割ほどががんを克服しています。
ですが、がんを克服した後も長生きしていく小児がん経験者たちが抱える課題はとても複雑で大きく深いものばかりです。
子どもの頃に過酷で長期にわたり治療をした小児がん経験者たちの中には、生き残っても社会の中で復学、就職、結婚、出産、子育てといった様々なライフイベントに不安を抱える人、晩期合併症などの影響から希望が持てなくなったという事例も私が出会った仲間たちの多くから聞いてきました。
私自身も、そして彼らの抱える問題の多くにも共通しているのは“将来への不安”と自分のケースと照らし合わせて不安を払拭することのできる“エビデンス”が少ないことです。
冒頭に述べたように、未来に向かって小児がんの経験者の数は年々増えていく一方で、まだまだ彼らの症例のデータや、病後のケアに必要なさまざまな情報が散在していてまとまっていないこと、仲間たちと出会える場が必要だということ、これらの問題に急ピッチで取り掛かる必要があるということを訴えたいのです。
私は、自分が立ちあげた団体の目標として、
◆小児がん経験者が公で自ら声をあげていく(親の代弁していた時代からシフトしていく)
◆小児がん経験者自らが自分のため、後輩たちのためにエビデンスを残していく
◆広域で散り散りになって孤立化している小児がん経験者の仲間たちをつなげるネットワークを構築していく
この3点が私たち小児がん経験者の様々な問題を乗り越えていくために必要な急所だと思っています。
国も、行政も、企業も、地域も、医療者も、そして私たち当事者自身を含めて、社会全体が小児がんの子どもたちを守り、彼らが社会の中でこの国を支える側の人材に成長できるように取り組みをしてほしいと思うとともに、私自身がその道を切り開くために前へと進んで行きたいと思います。

九州沖縄広域小児がんネットワーク QOL+ (クールプラス)  代表  林 志郎